妻が妊娠して、そろそろ家族用の車を準備する必要が出てきた。これまではおまつですべてをこなしていたが、二人乗りでトランクも小さく、ファミリーカーには使えない。
おまつは私の趣味に使うことにして、家族用に4ドアセダンを探し始めたのが2月の半ば頃だ。ドライブ好きとしては運転してみたい車もたくさんあって非常に悩ましいところだが、「4ドアで十分に荷物を積載でき、安全性を担保できるだけの装備があって、かつ妻も運転できるオートマチック車」に絞って探すことにした。
各ディーラーのウェブサイトを徘徊し、店を回って試乗を繰り返す中、ついに掘り出し物を見つけた。学生時代に乗っていたフォルクスワーゲン・ゴルフ以来の久しぶりのドイツ車である。
アウディA6。私の好きなインダストリアル・デザイナーの一人、ペーター・シュライアーがアウディ・チーフ・デザイナーだった時代の作品。シュライアーは、当時まだ格下だったアウディを、そのデザイン力でメルセデス・ベンツ、BMWと並ぶプレミアムブランドへと発展させた立役者の一人である。C5型と呼ばれるこのA6は、2000年代の前半まで生産されていた車だ。

英国留学中によく見かけた車で、その時から好印象を持っていた。当時のシュライアーらしい、シンプルかつ均整のとれたクリーンなスタイルで、わたくし的には白眉のジャーマンデザインだと思う。しかし車格が少々大きかったため、日本ではあまり売れなかった。
扱っているアウディのディーラーに問い合わせてみると、我々が必要とする装備はすべて備えたグレードで、年式はおまつと同じ2004年、走行距離はわずか3万5000㎞だという。
試乗してみると、大変きれいでしっかりとした車だった。まだ革内装のレザーのよい香りが残っている。前のオーナーは会社の経営者だったのだろうか、パーソナルユースなのだろうが登録は法人名義になっていた。状態はよいはずである(あくまでも一般論だが、法人名義の車は車検やメンテナンスを会社の経費で落とすことができるため、費用をかけてしっかりと整備されてきた車体が多い)。メンテナンスレコードを見てみると、ディーラー工場で車検はもとよりすべての定期点検が行われていた。
幸運なことに日本では不人気なこの車種は、そもそもかなり相場が低かった。しかも不景気の最中の決算期ということも重なって、非常によい条件が提示されてきた。
十分な安全装備もあって、万が一の時も少しは安心できるかもしれないということも決め手となって、この車が我が家にやってくることになった。車名にちなんで栄六(えいろく)と名付け、我が家で働いてもらっている。
栄六が我が家に到着したのは東日本大震災のまさに前日。まだ平和だった時の話である。
Related entry
- 川崎和男氏講演会
Related entry
- 大黒ミーティング
- 週末の箱根
- 清流を巡る旅
- Giro di Karuizawa
- 秋休み
- 軽井沢ミーティング2009
- 山口へ
- 四国への旅
最近のコメント